月別アーカイブ: 2015年2月

シェフ ~三ツ星フードトラック始めました~

映画では、ひとつのストーリーに様々な意味が投影される。

「アイアンマン」で一躍時の人となったジョン・ファブロー監督が、再び自主製作映画に着手した本作は、監督本人の人生経験や、仕事への哲学、また生きることへの賛歌など、重層的な(そしてそのすべてがポジティブな!)テーマを折り重ねている。

しかも、おいしい料理と痛快な話運びではさみ込んだ、誰でも楽しむことができるエンターテイメント作品として仕上げられている。

なお、本作の鑑賞中にはお腹が空くことが予想されるので、食後に観るか、あるいは焼き肉店でも予約してから鑑賞することをお勧めする。

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プリデスティネーション

「デスティネーション」は目的地や行き先、到着地点などを表す言葉だ。それに「○○以前」という意味の「プリ」がくっついて、「プリデスティネーション」。合わせると、「あらかじめ決まった行き先」、つまり「運命」や「天命」、あるいは神学的な意味の「予定説」も指す。

そんな複雑なタイトルが冠された本作は、非常に少ないキャストでありながら、先の読めないスリリングな展開を描き出す一作。中身はタイトルの何倍も複雑な面白さを持っている。
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アメリカン・スナイパー

巨匠クリント・イーストウッドにとって、暴力、そしてその最大の発露である戦争は、重大かつ重要なテーマであるようだ。

「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」で太平洋戦争を描き、「グラン・トリノ」では朝鮮戦争の記憶に苦しむ元兵士を演じて見せた。彼が興味を向けているのは、戦場で暴力を振るったものもまた、自分自身の暴力に苦しめられるという、いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)である。

イーストウッド最大のヒット作となった本作では、イラク戦争がいかなるものであったかという大きなテーマではなく、そこにいたひとりの兵士がたどった人生に焦点を当てている。

日本人である我々からすれば、現代のアメリカの現実を知る一端にもなるだろう。

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味園ユニバース

本作は「関ジャニ∞」の一員、渋谷すばるの初単独主演映画である。
関ジャニ∞はメンバー全員が関西出身、関西を拠点にしたグループだ(ファンの方にとっては今さらな説明だろうが、一応)。よって本作も大阪・千日前にある「味園ビル」と、その中にあるイベントスペース「ユニバース」を舞台にしている。味園ビルもユニバースも実在している点もポイントだ。
しかし、ユニバースはジャニーズが代表するようなメジャーな音楽シーンの舞台というよりは、もっとアンダーグラウンドな(たとえば、本作に登場する赤犬のような)ライブが行われている場所だ。
そんな相反する世界観のぶつかり合い、混沌とした音楽の世界観が大きな魅力になっている。
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フォックスキャッチャー

他人が罪を犯した時、その理由の全てを理解することは、決してできない。

どんなに綿密に調査をしても、それは同じだ。本作は実際に起きた事件を下敷きにしているが、なぜその行動をしたのかを、完全に解明しようとはしていない。

その代わり、シーンの全てからにじむ不穏さや、役者の所作のひとつひとつが、その結末に向けて時に加速し,時に停滞しながら進んでいく。

あなたがまだこの映画をまだ観ていないなら、事件のことを調べる前に本作をみて欲しい。史実者としては異端だが、ネタバレ厳禁だ。

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