チェイス!

インド映画に対して、どんなイメージがあるだろう。

3時間ほどの上映時間は当たり前。脈絡もなく踊り出す。勢い重視で脚本は重要視されていない……。そんなところだろうか。

インド映画、特にムンバイを中心とした映画産業……通称ボリウッドに、「豪華絢爛だが洗練されきっていない、野暮ったい映画」というイメージを持っている人も少なくないのではないかと思う。恥ずかしながら、筆者もこういった印象を抱いていた。

が、それらのイメージをぶっ飛ばす、超ド級のエンターテイメント映画にして、ハリウッドとボリウッドが理想的な融合を果たした超・超大作、それがこの「チェイス!」である。


シカゴの街は、騒乱のただ中にあった。大胆不敵な金庫破りが犯行を重ねていたのだ。

銀行の屋上から紙幣をばらまき、衆目の前に姿をさらしながらも、凄まじいバイクテクで警察の包囲を脱する。犯人の名はサーヒル(アミール・カーン)。父から受け継いだサーカス団の再興を目指しながらも、父の死の原因となった銀行への復讐を進めていたのだった。

一方、シカゴ警察はヒンディー語のメッセージが現場に残されていたことから、犯人をインド系人と断定。腕利きの刑事ジャイ(アビシェーク・バッチャン)と相棒のアリ(ウダイ・チョープラー)を呼び寄せた。

警察を訪れ、捜査への協力を申し出るサーヒル。スター女優アーリア(カトリーナ・カイフ)を迎え、サーカスの公演初日を迎えた彼は、犯人が自分と同じ奇術師であると告げる。

そして、迎えた公演初日。再び、銀行の金庫が破られる……。


冒頭の一連のシーンだけでも、この作品のエンターテイメント性、メッセージ性の高さがうかがい知れる。

少年期のサーヒルが生身のアクションを活かしてゴロツキを手玉に取り、軽々と彼らから逃げ出してみせるシーンは、邦題でも示されているチェイスシーンのクオリティの高さをにおわせる。

一転しておだやかな雰囲気で語られる、サーヒルと父との交流。サーカスでの芸を挟んでのショッキングな展開。

さんざん観客の感情を揺さぶってから、待ってましたと言わんばかりのダンスシーンがはじまる。金網を使ってのタップダンスはそれだけでも新鮮だが、アーミル・カーンの見事な肉体美を見せ付けてアクションに期待を持たせ、そしてダンスが決まったと同時に映し出されるタイトル。ここまでですでに、短編映画として成立しそうな見事なシークエンスだ。


原題「DHOOM3」と言うとおり、本作は「DHOOM」シリーズの三作目にあたる。

シリーズの主役はバッチャンとチョープラーが演じるコンビなのだが、むしろ犯罪者側が話を進行する、主人公としての役割を持っているのが特徴だ。本作も、サーヒル視点で物語が進むため、前作を観ていないと分からないという部分はひとつもない。

作品最大のウリは、バイクを用いてのアクションである。本作でサーヒルの駆るハイテクバイクには様々なギミックが搭載されており、ワイヤーを使っての綱渡り、水中に飛びこんでの脱出など、意表をつく展開が多数並べられている。

「意表をつく」というのは、奇術師であるサーヒルのキャラクターそのものの演出であるとも言える。時にはハイテクで、時には度肝を抜く体術で、観客が思ってもいないような方法を次々に繰り出してくる。

最大のタネは、誰もが驚かされることだろう。あまりに単純すぎて思い至らないようなところにこそ、一番の大ネタが隠されている、というのは、いかにも大がかりなマジックのようで、気持ちよく騙されてしまった。


シリーズの特徴はもう一つある。それは、刑事であるジャイが犯罪者と心の交流を行うという点だ。

彼らは単に追うものと追われるものの関係ではない。人と人なのだ。本作でも、長身でクールなジャイが、中盤以降に見せる人間としての顔は、ドラマ全体の雰囲気を大きく変える。

その相手役になるサマルは、サーヒルと大きく印象が変わる人物だ。あまりに自然な画づくりのせいで、観ている最中は「アーミル・カーンって本当に双子なのか?」と思ってしまうほど。それがまた、どんでん返しのフリになっているのも最高にクールだ。


さて、近年のインド映画では、海外ロケは特段珍しいことでもないらしい。とはいえ、全編をシカゴで撮影した本作は、明らかにハリウッド映画的な見せ方を意識している。ハリウッド御用達のスタントチームを使用しているというのだから、そのクオリティの高さは折り紙付きだ。

ではインド人がハリウッド映画を撮ったら、というような実験作品なのかというと、答えはノーだ。インド映画と聞いて誰もが思い浮かべるダンスシーンのクオリティは、他の文化圏ではまず観られないレベルのものだ。その上、作中の感情の流れにぴったり合致したカタチで提出されるから、バイクアクションに劣らぬ見せ場となっているのだ。

ハリウッド並みの技術を投入する一方で、ボリウッドでしかできないような演出を行う。そして練り上げられた脚本……観客の感情の流れを見事にコントロールするその手腕は、まさに良質なサーカスを観ているような気分にさせられる。

「本気のインド」というのが国内でのキャッチフレーズだが、それだけではとても語り切れていない。最尖端のエンターテイメントと呼ぶに相応しいできだ。

なお、もともとは171分の作品なのだが、国内上映版は151分に編集されている。ソフト化の暁には、ぜひとも完全版を見てみたい。



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チェイス!」への44件のフィードバック

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