映画 妖怪ウォッチ 誕生の秘密だニャン!

私たちはいま、妖怪ブームの真っ只中にいる。

ヒット商品は時にブームを巻き起こす。ブームが肥大化すれば、それは「社会現象」と呼ばれることになる。それほどの規模の作品が登場するのは、十年に一度と言ったところか。『妖怪ウォッチ』こそ、十年に一度の作品と呼んで差し支えあるまい。

いまや小学生以下にとって、妖怪は最も重要なカルチャーといっても過言ではない。

本作はそんな『妖怪ウォッチ』の劇場版第一作だ。ゲームが発売されてわずか一年半ほどでの劇場アニメ化は、『ポケットモンスター』以上のペースである。

では、時間がないかなその場しのぎで作られた映画になっているかというと、そうではない。職人芸的な工夫が随所にみられ、ブームの勢いを見事に乗りこなし、一過性のブームを文化として固着させようという、意欲的な内容に仕上がっている。


ある夜、眠っている天野ケータ(声:戸松遥)の腕から、妖怪を見ることができる時計・妖怪ウォッチが消えてしまう。同時に、ケータは妖怪たちに関する記憶すら失っていた。

妖怪デカニャンとの出会いから記憶を取り戻したケータは、友達妖怪のジバニャン(声:小桜エツコ)、妖怪執事ウィスパー(声:関智一)とともに、祖母の家のあるケマモト村へ向かった。

そこで出会った妖怪フユニャン(声:梶裕貴)から事情をきかされたケータたちは、妖怪ウォッチが消えた原因がある60年前へとタイムスリップ。そこにはケータの祖父・ケイゾウ(声:朴ロ美)がいた……。


まず評価したいのは、このブームのさなかにありながら、作品の立ち位置をきちんと理解して映画を作っているという点だ。

たとえば、ケータが妖怪についての記憶を失い、それを取り戻す過程で「妖怪はどんなものか」「どのように妖怪と友達になるのか」といった、この作品にはじめて触れる観客に対して必要な説明がユーモラスに盛り込まれている。

さらには、2014年、そこかしこで耳にした「ゲラゲラポーのうた」にあわせてあらすじが解説される。このアイデアは見事で、以降の物語にすんなり入っていける。

こうした工夫は映画ならではの特別感を残しつつ行っているのため、子供にとっても退屈にならない。見事な導入だ。


さて、ここでいう「はじめて触れる観客」は、メイン客層の親世代のことだ。個人的な所感だが、「妖怪ウォッチ」は、どうも子供世代と大人世代での熱量がまるで違うような印象を受ける。親世代が「よく分からないもの」と受け止めていては、ブームはすぐに去ってしまうに違いない。

そこで、この映画版は、親世代へ向けてのキャッチーな演出が多用される。六十年前というノスタルジックな舞台設定もそのためだろう。もちろん、昭和の景色は親世代にとってすら遠い過去だ。もしかしたら、親世代だけではなく祖父母の世代まで射程にとらえているのかもしれない。

大人にも楽しめるものにできている、どころではない。大人でないと分からないネタが多数ちりばめられている。上映が終わった後、親と子が「あれはなんだったのか」と会話のきっかけになるようにという気遣いもばっちりだ。


テレビアニメ版ではハイテンポで繰り出されるギャグや、オムニバス形式ゆえのきっちりまとまったシナリオづくりが特徴だ。本作でも、それはしっかりと踏襲されている。

とにかく、序盤から笑わせることにかけてまったく手を抜いていない。けっこう重大な事件が起きていても、楽しげな音楽や演出で笑いに変える。劇場で観れば、そのたび笑い声が響くのが心地よい。

だが、悪役であるウバウネ(声:片岡愛之助)が現れたあたりから、徐々に物語はシリアスさを増していく。その中でもサービスとしてのギャグを忘れず、飽きさせない構成だ。


また、頻繁に挿入されるパロディネタも本作の得意分野だ。映画版でもそれは健在。

映画だから映画のパロディをしよう、というのは見事な決断だ(ギャグアニメで映画化までこぎ着けながら、それができない作品はたくさんあった)。

一番の大ネタは志村けんをゲスト声優に招いての「マスターニャーダ」である。その元ネタをいまさら解説する必要は無いだろうが、きちんとシナリオ上の役割を果たし、しかし活躍させすぎはしない。このバランス感覚もいい。

その他にも、「ジバニャンが溶鉱炉に落ちていくシーン」があったリ~ナ~。ネットでよくウソネタバレとして使われる「ターミネーター」のクライマックスのパロディになっているリ~ナ~。たぶんそのためだけに決戦の場所を工場にしたのだから、いかに制作陣がギャグに全力をかけているからが伺えるリ~ナ~。


シナリオの焦点がケータとケイゾウに絞られているため、特に物語中盤は妖怪の出番が抑えがちになる。とはいえ、それも演出のうち。終盤での展開を際立たせている。特に、妖怪を召喚するシークエンスは「待ってました!」と言わんばかりだ。

その終盤では、テレビアニメ版ではあまり描かれない、妖怪たちのアクションシーンが見られる。特に、「レジェンド妖怪」と言われるような強力な妖怪たちの強さは丁寧に描写されている。

妖怪たちが呼びかけに応じて一緒に戦ってくれること、それ自体を最大のカタルシスにするのは、本作のテーマをはっきりと自覚しているからこそできることだ。

妖怪の特殊能力を使っての展開をもう少し見てみたかった気もするリ~ナ~。でも、今回は妖怪ウォッチを根付かせることが目的だっただろうから、来年の12月公開されるという劇場版第二作では存分に楽しめると期待したいリ~ナ~。


本作で描かれる物語は、タイトルの通り「誕生の秘密」についてだ。妖怪ウォッチを作ったのはケータの祖父・ケイゾウだ……となれば、実はケータが妖怪ウォッチを手にしたのは偶然ではなく、宿命だったわけだ。

その意味で、本作はいままでのメディア展開を大きく左右する領域に踏み込んでいる。もともと、ケータはゲーム版のプレイヤーキャラクターだ。「ふつうの小学生」のイメージであり、対象の小学生が感情移入しやすい、個性のないキャラクターだったといえる。

しかし、この物語を通じて彼のオリジンが描かれ、ケータは唯一無二の主役になった。

もう後戻りはできない。妖怪ウォッチ・サーガを歩み出した本作が今後どのような展開を見せるのか。

妖怪の名前どおり、オバケコンテンツに化ける様を、これからも見守っていきたい。



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