ベイマックス

和洋折衷、という言葉がある。

「折衷」というのは、よい部分を選び取って、ひとつの形に仕上げることを指す。

本作「ベイマックス」にはまさにこの言葉がぴったりだ。原作からして、日本のアニメ・漫画の文化をアメコミに取り入れた作品であったのを、さらにディズニーが見事な3Dアニメとして再構築した。

和と洋、2Dと3D、マーベルとディズニー、サンフランシスコと東京。さまざまなものを融合させ、折衷させた、職人芸とすら言って良いだろう、見事なバランス感覚の上に成り立つ、一種の到達点的なアニメ映画だ。


サンフランソウキョウに暮らす天才少年ヒロ(声:ライアン・ポッター/本城雄太郎)はこれといった目標もなく、アンダーグラウンドでロボットを戦わせる競技に夢中になっていた。

ヒロの兄・タダシ(声:ダニエル・ヘニー/小泉孝太郎)はそんな弟のことを案じ、自分のいる研究室へ連れて行く。世界最先端の技術を研究している彼らから大いに刺激を受けたヒロは、自分もこの大学で学びたいと決意する。

ところが、ヒロが入試に合格したその日、タダシは事故によって天に召されてしまう。ふさぎこむヒロの元に贈られてきたのは、兄が研究していたケアロボット・ベイマックス(声:スコット・アツィット/川島得愛)だった。

ベイマックスと共に過ごすうち、ヒロは元の明るい性格を取り戻していく。そして、兄の死に隠された意外な真相が明らかになるにつれ、悪との戦いへ身を投じることになる。


誰もが疑問に思うだろう、「サンフランソウキョウ」という謎の都市。もちろん、サンフランシスコと東京をマッシュアップ(組み合わせ)して作られた架空の都市だ。

映画の冒頭は、この都市の全景からはじまる。どこかの港町であり、都市部には超高層ビルが密集してひしめき、かと思えば下町にはどこか風情のある建物が連なっている。

驚くべきは、その風景の違和感のなさだ。日本人の目で見ても、多少ファンタジックなアレンジをされつつも、自然に「日本らしい」風景になっている。ハリウッド映画にありがちな、「ちゃんと取材してるのか?」というような日本の風景ではないのだ。

そのサンフランソウキョウを作り出すために、ホール監督をはじめとしたスタッフは大がかりな取材を敢行しているのだから、さすがの情熱である。

そして、「なぜサンフランシスコと東京を混ぜたのか?」という問い自体が、この映画そのものの存在理由であるとも言える。


原作「BIG HERO 6」は、マーベル・コミックスのコミック、いわゆるアメコミだ。舞台は「日本」とされており、ヒロやベイマックスら、主要なメンバーの名前や大まかな設定はこれが下敷きになっている。

本作はディズニー社がマーベル・エンターテイメントを買収して後、はじめてマーベルのコンテンツをディズニーがアニメ映画化したものだ。はたして、両者の技術がふんだんに使われている。

ディズニーの持ち味である緻密で安心感のあるストーリーテリング、CG技術によって生み出された背景の見事さ。一方で、マーベルの外連味あふれるアクションも随所で見られる。

さらにいえば、原作のアメコミにも、日本的な漫画表現やアニメ文化を抑えた演出が盛り込まれている。チームのあり方はアベンジャーズのようなヒーロー集団というよりは、スーパー戦隊のそれに近い。本作のベイマックスが、どこか「ドラえもん」を連想させるようなデザインにされているのも、こういった文脈の中で解釈すべきだろう。


本作は日本では宣伝の方向性が他国と大きく異なっていることも話題を呼んだ。他国ではヒーローもの、アクションものとしての要素が強く押し出されているのに対し、日本での宣伝はどちらかといえばハートウォーミングな方向性、少年とロボットの交流が押し出されていたのだ。

とはいえ、この広告戦略が間違いだとは言えない。ヒーローものと感動ものという、一見共存が難しい要素も本作では見事に折衷し、融合してみせた。両方が楽しめるというだけではない。感動できる要素があるからこそアクションには深みが生まれ、アクションを通じてしか描けない感動ヒューマンドラマに踏み込んでいる。

「ベイマックス」というロボットを題材に選んだのも、こういった構造と無関係ではないだろう。ロボティクスは様々な分野の研究や技術が組み合わせられたものであり、ケアロボットともなれば人間工学や社会学にまでその分野は及ぶ。ベイマックスそのものが、人間が生み出してきた技術や知識の偉大なる折衷なのだ。


物語の中核をなすプロットは、一貫してヒロの成長を描いている。兄の死という過酷な状況に立たされたヒロは、自分のすすむべき道を見失ってしまっていた。サンフランソウキョウは、そんな彼に様々な揺さぶりをかけていく。

途中、彼が思わず道を踏み外しそうになる時、それを引き留めるのは兄の姿が残ったムービーだ。しかし、ヒロのために撮られたものではない。ただひたむきに研究に没頭する様子である。そこにヒロが見たのは、何かを研究する、作り出すことに対しての純粋な気持ちである。兄に言われて改心したわけではなく、自分自身の心から浮かび上がった決断に従ったのである。そこでわざわざメッセージとして伝えなくても、彼らの間には間違いなく通じるものがあったという、見事な「絆」を描いている。

チームとしてまとまらなかった「ビッグヒーロー6」の面々が力をひとつにするまでのタメもよく効いていて、きちっとした戦いの流れもあって非常に「燃える」仕上がりになっている。これもひとつのマッシュアップだろう。

そして、さらにその後に続く本当のクライマックスは、ヒロが兄タダシと同じ選択をするという見事なリフレインにはじまる。さらに、これまでの展開の中で非常に象徴的に使われていた二枚のチップによる演出。これで感動するなというほうが無理、という見事な展開だ。

なお、スタッフロールの背景美術まで徹底してこだわり抜かれている。最後にタイトルが大きく表示されるのは多少ズッコけそうになるが、まあ愛嬌だ。その後はますますくだらない(そして非常に重要な)ラストカットもついているので、決して席を立たないことをオススメする。

スタン・リーが今回も楽しそうで何よりだ。



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