ANNIE/アニー

ミュージカルの中のミュージカルと言っても過言ではないだろう題材を、現代版にアレンジ。しかも、「赤毛の少女」というキャラクターが定着しているアニーを黒色人種に置き換えて……という、大胆な挑戦を挑んだ最新版「アニー」。

ウィル・スミス、ジェイ・Zというラッパーふたりがプロデュースを手がけ、音楽面からも最新版にアップデートしているのだろう。さまざまな仕掛けが音楽には仕込まれているのだろうが、筆者は残念ながら現代音楽には詳しくなく、その文脈で語る事はできない。

とはいえ、そんな知識を抜きにしても、前向きなメッセージが胸を打ち、心温まる映画になっている。


現代のニューヨーク。孤児のアニー(クワベンジャネ・ウォレス)は、横暴なハニガン(キャメロン・ディアス)に引き取られながらも、いつか両親が迎えに来てくれることを信じていた。

ある時、あやうく事故に遭いそうになったアニーは大富豪スタックス(ジェイミー・フォックス)に命を救われる。それがきっかけとなって、市長選に立候補していたスタックスの支持率は急上昇。アニーを使うことでさらに支持率をあげようと考えたスタックス陣営は、彼女を引き取り、スタックスと同居させる。

アニーと共に過ごすうち、孤独で仕事のことだけを考えていたスタックスもやがて変わりはじめ、彼女を養子にしようと考えはじめるが……。


「小さな孤児アニー」を原作としたブロードウェイミュージカル、「アニー」の三度目の実写映画化である。

原作およびブロードウェイ版(と、日本版ミュージカル)は大恐慌時代を背景とした時代ものでもあるわけだが、今作では大胆に解釈を変え、現代のニューヨークを舞台にしている。冒頭でアニーがルーズベルトの政策に触れてみせるのは、原作へのオマージュをしつつ、違った時代であることを強調しているわけだ。

もちろん、「赤毛のアニー」がその前に話してみせるのもそうだ。やや押しつけがましい雰囲気の彼女に続いて、「アニーB」と呼ばれて登場する本当の主役、というのはシャレがきいている。


アニーやハニガンらには大きなイメージの変更はない(といっても、1982年版のような大がかりな孤児院ではなくなっているが)が、アレンジの大きな影響を受けているのがスタックス(原作ではウォーバックス)だ。

エリートではなくたたき上げ、一代で実業家としてのし上がり、いまや世界イチの大富豪……というのは、ややファンタジックではあるが、彼の会社の事業内容ならなるほどあり得ない話ではない。いまや世界を支配しているのは誰か、ということを端的にあらわしている。

また、彼が市長を狙っているという筋書きも、アニーが「選ばれる」理由づけをしっかりと補完している。本人が望むのとは別にに、ブレーンがとんとん拍子で話を進めてしまうのも、実に現代的だ。自分のイメージですら、他者にコンサルティングしてもらう時代ということか。


ミュージカルシーンはさすがに気合いが入っている。ブロードウェイ版や日本版でも様々な演出が凝らされているのだが、本作では映画ならではの、カメラの中で作られる世界がより反映されている。

特にソロの曲では、そのキャラにとって世界がどのように見えているのかが如実に表れている。アニーの「トゥモロー」、ハニガンの「リトル・ガールズ」と、そのキャラが見ている世界と現実の風景とを織り交ぜた演出は非常に新鮮だ。キャメロン・ディアス自身のキャリアをパロディにしたようなハニガンの設計もあり、笑えるがどこかもの悲しい雰囲気もいい。

「ザ・シティーズ・ユアーズ」でニューヨークのことを歌いながら、その景観はすでにスタックスの支配に置かれている、という皮肉がきいたシーンも、彼の見ている世界を表現していると言っていいだろう。


スタックスのキャラクター造形が変更されたことで、物語全体のテンションはより温かく、親しみやすくなっている。時には厳しいことや悲しいこともあるが、それでも前向きに生きていこう、という根本的なメッセージはいつの時代も変わらない、ということだろうか。

余談だが、柴犬のように見えるサンディはチャウチャウとゴールデンレトリバーの混血種らしい。彼も実によい仕事をしていた。

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  1. ピンバック: IRC公開LOG #もの書き予備 2015年2月2日 | クリエイターズネットワーク

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