シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア

現代社会に生きるヴァンパイアたち。死者でありながら人間たちから隠れ、ひっそりと身を寄せ合って暮らしている……と、これだけ書くと、ずいぶん深刻そうに思えるが、全編のタッチはコメディだ。

モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)形式をうまく使って、客観的な視点で吸血鬼をとらえる。異常なものを主観的にとらえればホラー、客観的に見ればコメディ、というのはよく言われることだが、本作はまさにそれを体現している。

下品なギャグも頻出する作品だが、モキュメンタリーを利用してどこか品の良いナンセンスギャグとして成立させている。そうして、吸血鬼たちを「彼らは本当にどこかに生きているのかも」という気分にさせてくれる。(もちろん、吸血鬼だから死んでいるのだが)


ニュージーランドの都市にシェアハウスして暮らすヴァンパイア、ヴィアゴ(タイカ・ワイティティ)、ディーコン(ジョナサン・ブロー)、ヴラド(ジェマイン・クレメント)たち。毎夜楽器を演奏したり、踊ったり、クラブに繰り出したりする。

そんな風に楽しく暮らしている彼らだが、ある夜、「食事」として連れてきた青年ニック(コリ・ゴンザレス=マクエル)を8000歳のピーター(ベン・フランシャム)が吸血鬼に変えてしまう。

吸血鬼としての生活に慣れていないニックは様々なトラブルを起こし、先輩たちを困らせる。果ては、彼らのシェアハウスに人間であるスチュー(スチュー・ラザフォード)を連れてくる始末。ところが、案外スチューはヴァンパイアたちに気に入られて……。


本作は、現代に生きる吸血鬼たちの生活に密着し、記録映像にしているというテイ。この前提条件がすでにおかしな雰囲気を醸し出していて、本作独特のナンセンスな世界に徐々に引き込まれていく。

吸血鬼という題材は人の心を引き付けるものらしい。モキュメンタリー形式も「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のパロディ。メインキャラクターのうち、ヴラドは『吸血鬼ドラキュラ』(ということは、ドラキュラ ZEROのヴラドである)、ピーターは『吸血鬼ノスフェラトゥ』からイメージを引っぱって来ている。ほかにも、作品の至る所で直接的な引用やパロディが盛り込まれている。


とはいえ、映画のメインは現代に生きる吸血鬼たちの、おかしくもどこかもの悲しい雰囲気だ。吸血せずにはいられないが、血を吸うのがうまくいかず床を汚してしまったり、それを仲間のヴァンパイアに突っ込まれて逆ギレしたりする。

みんな伊達男を気取っているが、鏡に映らないから自分の格好がわからない……などなど、適度なくすぐりが序盤に重ねられ、肩身が狭い彼らの生活にくすくす笑いが漏れ出してくる。そして、「あいつら、ホモじゃないの?」と言われるぐらい仲の良い彼らの生活に愛着が湧いてくるわけだ。

本格的に話が動き出すのは、ニックとスチューが登場してから。吸血鬼になりたてのニックは様々なトラブルを引き起こす。「若い吸血鬼の暴走」となれば、襲われる人間たちからすれば完全にホラーだ。しかし、それを迷惑がる先輩ヴァンパイアの視点にカメラが置かれているから、どうにも締まらない。結局、超能力を持っているだけで中年男と若い兄ちゃんのケンカである。


そうしたおかしさを成立させているのは、「吸血鬼の実在する社会」という背景が作り込まれているから。様々な資料に当たって作られたのだろう分厚い背景設定は、シェアハウスを起点に徐々に広がっていく。アイデアが様々に盛り込まれていて、小ネタばかりでも感心してしまうほど。

吸血鬼が増えたから、予定していた人は後回し、というのも、何かしきたりにしたがってのことなのだろう。爆笑必至の「恥辱まみれの行進」も、現代人のニックからすれば痛くもかゆくもない刑罰なのだが。肉体的なダメージがほとんどない吸血鬼にしてみれば、人間とはまったく違った意味合いを持つのかもしれない。

かと思えば、吸血鬼ならではの新鮮な見せ方をするアクションシーンやサスペンスもあり、飽きさせない作りだ。


ドタバタギャグだった序盤から終盤に進むに従って、彼ら吸血鬼の抱える問題にフォーカスが合っていく。彼らが生きて来た時間の中で、徐々に人間や文明との関わり方も変わってきたのだろう。霧の古城なんてしゃれた場所に住むわけにもいかず、シェアハウスにまで追いやられているのだから悲しい。

しかし、悲しさが増せば増すほど、全体にただようおかしさもまた増していく。それはどこか、世の中に馴染めないアウトサイダーたちの姿を描いているようでありながら、深刻になりすぎる前にまた幻想の世界に戻っていく。

こうした全体の構成がモキュメンタリーという方法にはぴったりだ。踏み込みすぎれば危うい領域のエピソードもたくさんある中で、うまく全体のトーンをコメディに落とし込んでいる。とはいえ、ニュージーランド仕込みのギャグは日本人には多少刺激が強いかも知れない。ホラー映画も同時に見るつもりで劇場に脚を運んで欲しい。


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