劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス

映画は心の旅だ。

だから、時には異国の文化や思いもよらない世界観にぶち当たることがある。

あるあるを楽しむことができるのも魅力なら、「こんな考え方や表現があったなんて!」という驚きも、また映画を観る楽しみといえる。

さて、本作はここ数年でも指折りの「思いもよらなさ」を味わうことができる。異世界に迷い込んだような、不思議な視聴感だ。


※国内では吹き替え版のみが公開されているようなので、以下では吹き替え版の声優の名前のみを表示する。

ムーミン谷に住むムーミン(声:高山みなみ)たちは、気ままに毎日を暮らしていた。しかし、ある時フローレン(声:かないみか)はあこがれの南のリゾート地・リビエラに行きたいと言い出す。

折良くやってきた嵐に乗ればリビエラまですぐだというムーミンパパ(声:大塚明夫)は、ムーミンママ(声:谷育子)やミイ(声:佐久間レイ)をつれて、小さな船で海へこぎ出していく。

なんとかリビエラには到着したものの、フローレンはプレイボーイのクラーク(声:大竹一樹)と、ムーミンパパはモンガガ侯爵(声:三村マサカズ)と、それぞれ意気投合してしまう。いっぽう、ムーミンママは騒がしい観光地に馴染めず、静かな場所で暮らしはじめてしまう。

ばらばらになってしまった一家は、元通りの仲良し家族に戻れるのか……?


ベイマックス』や『楽園追放』を筆頭に、近年のアニメーション技術の発展はめざましい。特に、3Dによるきわめて高い水準の作画は、実写では表現できないような世界観を、リアリティを持って描き出すことができる。

そんな近年にあって、あえて手描きアニメーションで表現された世界は、一種奇妙にさえ思える。

原作マンガのタッチを再現したのだろう画面づくりは、極端に立体感や遠近感に乏しい。キャラクターが背景の中で目立つような色使いというわけでなく、見るからに「手で描いた」ことがはっきりと分かるようになっている。アニメとして見やすくする工夫をあえてしていないのだ。


さらには、シナリオもアニメとしての見やすさよりもむしろ、原作の世界観を再現することに比重が置かれている。

唐突に現れる不思議な生きもの。犬や猫とふつうに会話をするのにペットとして扱っている。かと思えば、酔っ払ったムーミンパパの行動は「いい大人がグデグデに酔ったとき」の行動パターンだったりして、妙に現実的な箇所もある。

全体としては「田舎ものの一家が都会にやってきて騒動を巻き起こす」……というものなのだが、随所に日本人では考えつかないようなアイデアがちりばめられている。

序盤のムーミンパパのセリフ「嵐が来るぞ。いま船を出せばひとっ飛びだ!」に象徴されるように、この作品の中では明らかに現実とは違うルールが物語を支えているのだ。

とはいえ、作品の中ではたしかにそのルールがはたらいていて、けっして破綻しているわけではない。この感覚は見てもらわなければ伝わらないと思う。


こうした作画と作劇が絡み合った結果、どうなるか。だんだん脳は混乱してくる。極端に言えば、この世界に浸ろうと思うと、自分が三次元の存在であることを忘れる必要があるのだ。

それが受け付けない観客もいるかもしれないが、明らかにそれが本作の「味」だ。めくるめく童話の世界に飲み込まれていく。酔っ払ったような気分で、画面の中のムーミンに感情移入していくことになる。

作中でどんな展開、どんな見せ場があるかはあまり正確に表現できる自信がないのだが、この「常識が粉々に打ち砕かれて、異世界にさまよい混んだような視聴感」は、本作を大スクリーンで見てこそのものだ。


見ているだけでは少しわかりにくい箇所をフォローしておこう。

ムーミンパパが名乗る「ド・ムーミン」は「ムーミン谷の」という意味。「ムーミン谷のムーミン一家」と言われれば、いかにも貴族ふう、自分の領地を持っている人物なのだろう、となるわけだ。

なぜムーミン一家がムーミン谷という土地に住んでいるのか、明確な設定があるわけではない。原作のテキトーな世界設定を茶化したギャグになっているわけだ。

ムーミンが彫刻をするシーンで石の中に形を見いだすのは、ミケランジェロの「石の中から形を見いだす」といった創作スタイルのパロディだ。よほどフローレンのことが気になっていたと見える。

劇中でモンガガ侯爵が話す「ボヘミアン」は、故郷を失った根無し草のこと。セレブとしての窮屈な生活から、気ままな生活に憧れる……という、ちょうどフローレンやムーミンパパとは逆のことを考えているわけだ。


声優陣は平成版アニメ「楽しいムーミン一家」のキャストを集めた豪華なメンバー。ムーミン一家の独特の空気感を見事に演じている。

また、ゲスト声優であるさまぁ~ずのふたりも、なかなかの快演を見せている。キャラクターが本人たちにそっくりなためもあるが、特に三村マサカズ演じるモンガガ侯爵は本作のアンニュイな雰囲気をしっかり支えてみせている。ムーミンパパとのやりとりは印象的だ。

木村カエラは、エンドクレジットを見るまでプロの声優がやっているのだと思っていたぐらいうまい。今後もちょくちょく吹き替えの仕事があってもおかしくない。


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劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」への33件のフィードバック

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