チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密

ジョニー・デップが自らの製作で「長年演じたかった」と語るキャラクターは、イギリスの貴族にしてインチキ美術商。たかだか数百円のしろものを何百万という高値で売りつけるような、正統派とはとても言えない主人公だ。

そんな彼が対面するのも、一癖も二癖もあるキャラクターばかり。そんな登場人物たちのウィットの利かせた会話が全編にわたって繰り広げられる。

華麗なる名画の秘密、という副題からも察せられる通り、ユーモラスでありながらゴージャスな画面作りも特徴だ。


インチキ美術商のモルデカイ(ジョニー・デップ)は詐欺まがいのペテンで美術品を売りつけて儲ける、インチキ美術商。自分の体面とちょびヒゲを何より愛するナルシストだ。

あるとき、修復中のゴヤの絵画が奪われるという事件が発生した。MI5のマートランド警部補(ユアン・マクレガー)は美術界の裏事情にくわしいモルデカイに絵画の捜索を依頼する。

召使いにして用心棒のジョック(ポール・ベタニー)とともに捜査を続けるうち、モルデカイは名画に隠された秘密と、強盗犯の真の目的に思い至る。妻のジョアンナ(グウィネス・パルトロウ)も暗躍をはじめ、事態は世界中を巻き込んだ争奪戦に発展していく。


「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのひょうひょうとした海賊役や「トランセンデンス」の天才科学者役など、切れ者の印象も強いデップだが、今回演じるキャラクターは正真正銘、へなちょこ男。

どれぐらいへなちょこかというと、少し走っただけで息が上がる。肉体労働は召使任せ。頭のキレはどうかというと、冒頭から以前しかけたペテンを見破られてしまっている。

ではチャーリー・モルデカイの武器は何かといえば、徹底した自己愛と常識に縛られない発想だ。

これらの要素は時には(というかほとんどの場合)トラブルの種になるが、ごくまれに物事の本質をとらえ、ほかの誰にもまねできない大胆な行動につながるわけだ。

そんな彼を象徴するのが、非常に印象的な「ちょびヒゲ」。他人には無関心なこの男が、ヒゲだけは丹精込めて整えるのを欠かさない。命よりも大事なアイデンティティというわけだ。


原作は1973年に出版されたイギリスの小説。日本ではサンリオSF文庫から一部が出版されていたが、映画化に合わせて角川文庫から全編が刊行された。

筆者は未読だが、調べた限りではイギリス流のきわどいジョークや皮肉の利いたユーモアが売りのシリーズのようだ。

本作ではある程度忠実に原作の内容を再現しており、具体的な年代は示されないが、1970年代が舞台と考えていいだろう。


見どころはミステリー的な部分よりもユーモアをきかせた会話にあり、変人モルデカイが捜査の中でマートランドをはじめとした関係者を振り回し、あるいは振り回されるのがテンポよく楽しめる。

登場人物たちも個性豊かだ。特に、主人公のわきを固める3人はすばらしい。

モルデカイの妻・ジョアンナを演じるグウィネス・パルトロウはファム・ファタール役を自信満々で演じてみせ、本作最大の(そしてもっともしょうもない)コメディも乗りこなす。

警部補役のユアン・マクレガーは影の主役と言ってもいい。見事なイギリス英語で雰囲気を支え、物語全体の推進力を保持し続ける。

召使にして用心棒のポール・ベタニーはモルデカイの被害を一身に受けながらも、忠臣としてそばに仕えるおいしい役どころ。とある「悪癖」も妙な説得力がある。

俳優陣がセリフの押収を通じて描き出す雰囲気を楽しめる映画だ。


どうにも、主人公モルデカイのキャラクターは凝っているわりに演出にまで昇華されていないように思える。妻の過剰な反応からすれば「剃ればいいのに」と観客はみな思ってしまいそうなのだが、そこまでヒゲにこだわる理由が伝わってこないのだ。原作当時ではそれほどおかしくはなかったのかもしれないが、現代の日本人から見るとモルデカイが変人だと印象づけられるよりは、作品全体が隔絶しているように思える。「モルデカイ家の男子はみな立派なひげを生やしていた」というなら、彼らの肖像画を映して見せるなどの工夫が必要だったのではないか。

また、ミステリーとしては世界中移動しているわりに登場人物の数は少なく、小ぢんまりとした話だという印象を受ける。ネタばらしのシーンまで進んでも、「そうだったのか」というよりは、「ふーん」という感じだ。せっかくさまざまなキャラクターが登場しているのだから、その人物全員が話の結末に絡むような工夫がほしかった。悪役どうしが対立するなど、「モルデカイと誰か」以外の人間関係が観たい。

なお、全編通してちょっと下品なギャグが多い。特に嘔吐関係の演出が苦手な人は気を付けたほうがいいだろう。

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