プリデスティネーション

「デスティネーション」は目的地や行き先、到着地点などを表す言葉だ。それに「○○以前」という意味の「プリ」がくっついて、「プリデスティネーション」。合わせると、「あらかじめ決まった行き先」、つまり「運命」や「天命」、あるいは神学的な意味の「予定説」も指す。

そんな複雑なタイトルが冠された本作は、非常に少ないキャストでありながら、先の読めないスリリングな展開を描き出す一作。中身はタイトルの何倍も複雑な面白さを持っている。


1970年のニューヨーク。深夜にバーを訪れた青年ジョン(セーラ・スヌーク)は、バーテンダー(イーサン・ホーク)とふとしたきっかけで打ち解け、自らの境遇を語り始める。

信じがたい半生を聞かされたバーテンダーは、ジョンに対して就職を持ちかける。なんと彼はタイムワープを繰り返して犯罪を防ぐ時空警察のエージェントだというのだ。

いぶかしむジョンを連れて時空を移動したバーテンダーは、時空警察の目的を明かす。それは、凶悪な爆弾魔が引き起こす、何千人もの人を巻き込んだ爆破事件を防ぐこと。

衝撃的な体験を経てエージェントとなったジョンは、やがて自らの運命と向き合うことになる。


非常に特殊な物語と構造を持った作品なので、ネタバレに触れずに感想を書くのが難しいが、なんとか挑戦していく。

時間を自由にさかのぼり、そこで起きる事件を解決していくタイムパトロールという設定はそこまで目新しいものでもない。というのは当たり前で、原作はSF小説の巨匠ロバート・A・ハインラインの初期短編で「輪廻の蛇(‘All You Zombies―’)」という作品。なんと書かれたのは1960年だ。

タイムパラドックスものジャンル(たとえば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」)の古典にして究極的な逸品として、SFでは有名な作品である。


舞台になるのは93年までの出来事だから、タイムトラベルもの映画なのに現在も未来も登場しない。そんな古典作品を、なぜいまこの時代に映画化しようとしたのか、理由はいくつか考えられる。

まずひとつは、作品の持つ現代的なテーマ性だ。必然性と自由意志との対立は、誰もが人生で一度はぶつかる問題だろう。自分の力ではどうしようもない状況下で結論を下さなければならない時、自分の意志で決断したということは、時に人を長く苦しめることになる。

さらには、本作の登場人物は「自分がどこから来た何者であるのか」というアイデンティティに悩むことになる。これはもちろん、生きていれば誰もが直面せざるを得ない命題である。よく注意して観れば、本作で巻き起こることは寓話化されてこそいるが、誰の人生でも起きることなのだ。


もう一つ理由があるとすれば、配役だろう。非常に特殊な設定を持つキャラクターを演じあげることができる俳優がいればこそ成立する企画だ。

サラ・スヌークは、この役に対して理想的だ。特殊メイクや照明、演出の力があるとはいえ、彼女が初登場したシーンでは筆者は完全に男性だと思っていたし、後の展開には大いに驚かされた。

照明のあて方は特に工夫されている。ジェーンとして画面に映るときには自然光や明るく白い光で肌の白さを際立たせ、男性ジョンの際は暗い間接照明や外套など、弱い光で影を作っている。それはもちろん性差だけでなく、歩んできた人生の重みも同時に演出している

もちろん、映画全体のルックスを一手に引き受ける名優イーサン・ホークのことは語るまでもない。真実が明らかになるまでの中立的な雰囲気や細かい所作は、観客の想像力を大いに刺激し、二度観る楽しさを保証してくれている。


時間が複雑に前後する本作は、その分どのシーンがどの時代なのかを印象づける手腕が絶妙だ。

各時代のカラーリングを自然に際立たせ、ほこりっぽさや湿度まで伝わってくるような画面づくり。特に、もっとも比重の大きなバーの中は、温かみのあるブラウンが重視され、いま起きている景色でありながら、セピア色の思い出のようにも感じられる。

衣装や小道具のひとつでも不自然に見えれば一気に崩れてしまう、壮大なドミノ倒しのような映画を見事に作り上げた工夫と労力には賞賛を贈りたい。


シナリオは多少、人によっては乗り切れない部分があるかもしれない。

自分のアイデンティティがうまく求められず、ぐらついた人格を描いているため、自分とはあまり関係ない話のようにも思えるかも知れない。

しかし、自分が本当は何者なのかということは、誰もが人生で向き合わなければならないテーマだ。しかも、それを決めるのも自分自身なのだ。

なお、原作では彼が追う爆弾魔の設定はなかったようだ。だが、彼の人生がどのように閉じるかという所まで描いてみせたのは、原作にひとつ深みを足したように思う。筆者は鑑賞後、なぜ「未婚の母」が爆弾魔になっていったのかを考えた。けっきょく、彼にとっては自分自身だけが自分を理解できる唯一の存在だったのだ。正義や使命に燃えていた彼も、ついには自分の本当に求めていたものに気づいたのだろう。しかも、あらかじめ答えはすでに与えられている……いままでの人生がそうであったように。これを究極の自己実現と取るか、運命に抗えなかったと取るかは、むろん観客のひとりひとりが考えるべきことだ。


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プリデスティネーション」への51件のフィードバック

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