WILD CARD ワイルドカード

主演・ジェイソン・ステイサム、サイモン・ウェスト監督といえば「メカニック」に「エクスペンダブルズ2」と、何度もコンビを組んできた勝手知ったるコンビだろう。

イメージ通りなら、見やすく乗りの軽いからっとしたアクション映画……となりそうだが、本作は一転して渋い雰囲気を漂わせたハードボイルド映画だ。

ジェイソン・ステイサムも40台後半に差し掛かり、均整のとれた肉体美に頼らずに映画を作ることへ挑戦した結果だろうか。意外なほどに落ち着いた雰囲気を味わえる。


元軍人の用心棒、ニック・ワイルド(ジェイソン・ステイサム)は、ラスベガスの一角で細々とした仕事を請け負って生活していた。

ある時、元恋人のホリー(ドミニク・ガルシア・ロリド)が彼に助けを求める。彼女はある男たちに暴行を受け、重傷を負ったのだ。ホリーの頼みを受け、ニックは彼らを痛めつけた。

しかし、男たちは街を仕切るマフィアとつながり、メンツをつぶしたニックへ復讐しようとする。

一方、ニックはIT技術で財を築いた青年サイラス(マイケル・アンガラノ)のボディガードを引き受け、彼との交流を深めていく……。


今やアクション俳優の代表選手と言っても過言ではないだろうジェイソン・ステイサム。しかし本作では、いつもの肉体派アクションはあえて抑え、内面性を重視した演技に挑戦している。

もちろん主人公ニックは腕利きの用心棒であり、いざ戦えば敵なしだ。前半の見せ場であるホテルの中での格闘シーンは見事。ハッタリの利いたスローモーションに、タイトル通りのカードを使ったアクションは斬新だ。

さらには、アクションに続く一種の拷問シーンはますます大迫力。男性なら目をそらさずにはいられない。はっきり言って、ここがこの映画最大の見せ場といえる。ステイサムがそれを見ているだけなのは非常にもったいない。


しかしその後、画面のトーンは大きく変化する。

暴力的な雰囲気をぱっと明るくするマイケル・アンガラノの登場を契機に、ニックの内面に迫るシーンが増加していく。ギャンブル依存に陥り、掃き溜めのような生活から抜け出せなくなっている彼に対し、自分の力で大金を手にしたサイラス。ふたりのちょっとしたやり取りが、行く宛のないニックの境遇と、その心理を浮き上がらせていく。

ステイサムの孤独を際立たせるカットは、静かながらちょっとした見せ場だ。ベッドの上で苦悩し、目的地のないドライブに出る。それはまるで、さまざまな作品で大暴れしてきたステイサムが、その暴力の反動に苦しんでいるかのようだ。


ハードボイルド調で演出される二人の交流が作品のテーマを伝えている。

二人はある点で非常にそっくりだ。ニックは肉体的な強さを、サイラスは頭脳と経済力を持ちながらも、「このままではいけない」という気持ちを常に抱えている。二人にともに欠けていたものは何かは、クライマックスの展開が物語ってくれる。

ニックがその答えを示すシーンは二つ。クライマックとなる格闘シーンの手前に用意されている。一方は、一度マフィアの追手から逃れながらも、彼らの前に姿を現して戦いを挑むシーン。彼をそうさせたきっかけとなるセリフに注目だ。もう一方は、カジノで自らがギャンブル依存であることを認めるシーン。最大の障害は自分自身の内にあり、それを乗り越えることでしか前には進めないのだ。

直接言葉で語るのではなく、彼らの行動そのものが答えだ、というのは見応えがあった。

93分と短い本作だが、それでも上長に感じてしまうのは、全体の編集テンポが緩やかなせいだけではないだろう。はっきり言って、見せ場が少ないように感じた。序盤のホテルでの格闘からの精神的な拷問シーンが最高潮。その後二つある格闘シーンはいまいち派手さに欠けるし、マフィアに呼び出されての会話劇は、決め手となる「ワイルドは銃を使わない」という点が、キャラクターのそれまでの描写で際立っていなかったため、どうにも緊張感や解放感に欠ける。ハードボイルド調の画面作りに徹し、シーン単位でのびしっと決まった箇所が増えていればもう少し見栄えが違っていたのではないかと思う。


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