るろうに剣心 伝説の最期編

週刊少年ジャンプの超人気作を、日本映画としては異例の予算を使って贅沢に実写化した一大娯楽活劇、「るろうに剣心」。しかも、京都大火編からの二連続公開ということで、桁違いのスケールが堪能できる。

前作・京都大火編で嵐の海に突き落とされた緋村剣心(佐藤健)。その彼を救ったのは、他ならぬ剣術の師匠・比古清十郎(福山雅治)だった。
剣心は仇敵・志々雄真実(藤原竜也)を倒すため、比古に奥義伝授を請う。しかし、比古は奥義を会得するには剣心が足りないものがあると告げる。
一方、敦賀に鋼鉄船で現れた志々雄は、内務卿・伊藤博文と取引し、剣心を指名手配。かくして、剣心は政府からも追われる身となりながらも、孤独な戦いを続ける……。

アクションシーンは、圧巻の一言。
ワイヤーアクションや特殊効果を駆使したチャンバラは、漫画の世界をそのまま実写化したような迫力を持ちながらも、画面づくりの力か、リアリティと説得力を感じさせる。
特に伊勢谷友介演じる四乃森蒼紫との対決は、動き回り、跳ね回り、斬り合ったかと思うと、蹴りや投げが飛びかう、本作のチャンバラが集結したような大活劇。
ストップモーションを多用して尺を稼ぐようなこともなく、スピード感を重視した演出。細かい動作をごまかすということもなく、ワンカットワンカットに役者と演出が全力を注いでいる印象だ。

ストーリー面では、剣心の成長が序盤のキモ。
幕末最強とうたわれ、何十人もの人間を斬り殺した人斬り抜刀斎。しかし師である比古に言わせれば、大事なモノが欠けているという。
その大事なモノがなんなのか。情感たっぷりに描かれる修行シーンは、少年漫画のお約束でありながら、大人向けのメッセージを含ませている。
その答えがなんなのかが分かったとき、前作では同格に見えていた蒼紫を圧倒するのだから痛快だ。

アクション一辺倒かといえばそうでもない。
剣心の戦いの裏では志々雄と伊藤博文(原作には登場しない、映画オリジナルキャラクターだ!)との政治戦がある。
政治の根本は暴力である点を踏まえれば、志々雄は実に政治のやり方を理解している。時代を打ち倒そうとする志々雄を倒すには、剣術で倒すだけでは不可能だ。伊藤や斎藤をはじめとして、「明治政府」が彼にどう立ち向かうかというのも見所である。
原作へのリスペクトも所々で感じられ、原作を知っていれば知っているほど楽しめる作品として仕上げてくれている。

前作ではあまり目立ったシーンのなかった高荷恵(蒼井優)が、緊迫したシーンが連続する中で一服の清涼剤のようにさわやかなシーンを作っていたのもよい。
神木隆之介、滝藤賢一、高橋メアリージュンらの演技は、原作を知っていればより深く楽しむことができる。
しかしなんといっても、藤原竜也は圧倒的だ。顔がほとんど見えない包帯メイクでも、その隙間から見える目元口元で幕末の幽鬼・志々雄を表現し、チャンバラにおいてもそうそうたるメンバーを前にまったく引けを取らない迫力を見せてくれる。

これだけの興行成績なら、続編の制作もない話ではない。
課題があるとすれば、藤原竜也演じる志々雄以上の迫力がある敵役を見いだせるかどうかではあるが……
まあ、原作でできなかったことを映画でこなすというのも無理がある話である。
総じて作り出されている、漫画的でありながらも説得力がある風景は、かつての時代劇にあったものが脈々と受け継がれているという証左かもしれない。
願わくば、こうした贅沢な時代劇がもっとたくさん観てみたい。