ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

今や「007」シリーズに次ぐスパイ映画の代表作にまで成長した「ミッション:インポッシブル」。

スパイ映画が目白押しとなった2015年、「ジュラシック・ワールド」と同時期の公開でありながらも大健闘の興収を稼ぎ出した本作は、その売り上げにふさわしい充実した内容も持っている。

世界中を飛び回るゴージャスな満足感に趣向を凝らし抜いたアクション、そしてスター中のスター、トム・クルーズの圧倒的な存在感を駆使し、観客を一秒も飽きさせない、超正統派エンターテインメント映画の世界へ連れて行ってくれる。


イーサン・ハント(トム・クルーズ)は「シンジケート」と呼ばれる、正体不明のテロリスト組織を追っていた。

ところが、ロンドンでの捜査中にシンジケートの首魁・レーン(ショーン・ハリス)の罠にかかり、イーサンは捕らえられてしまう。目を覚ましたとき、目の前にいたのは、死んだはずの工作員だった。

一方、IMFは指令によって解体され、ブラント(ジェレミー・レナー)やベンジー(サイモン・ペッグ)らは、CIAに取り込まれていた。

謎の美女イルサ(レベッカ・ファーガソン)の協力によりからくも一命を取り留めたイーサンは、密かに潜伏してシンジケートを追っていた……。


ポスターにもなっている冒頭のアクションシーンは圧巻の一言。

トム・クルーズが生身で飛行機に捕まるぎょっとするアクションは、なんと合成・吹き替えなし、トムが生身で見たままのことを行っているという、とんでもないスタントだ。(いちおう、命綱は加工して消しているようだが)

「007」シリーズもかくやというようなアバンタイトルから、見事なタイミングではじまるオープニングタイトル。ミッション:インポッシブルのテーマが流れるだけで嬉しくなる筆者としては、ここまでで期待度は最高潮になっているのだが、続くシーンがますますいい。

一転して静かなトーンで映し出されるのは、「キングスマン」のテーラーを思わせるようなロンドンの街並。「スパイ大作戦」時代からの伝統である任務通達は意外な展開を向かえ、観客をさらに驚かせる。

ここまでで分かるように、本作はまずサービス満点、観客の興味を見事に引き、ストーリーにグイグイ引き込んでくれる。


その後の展開で派手な見せ場になるシーンが3か所あるが、いずれも非常に魅力的でアイデアにあふれた展開になっている。

ウィーンのオペラハウスを貸し切って撮影したオペラ上映中の舞台裏での格闘戦は生身の重量感を感じさせ、一刻を争うサスペンスとの融合が見事だ。

シリーズのお約束ともなっている金庫破りだが、今回はなんと水中での素潜り。観ているこっちまで息が止まってしまうような、およそ体験したことがない世界が味わえる。

息も尽かさず続くバイクチェイスは、猛スピードをリアリティたっぷりに描き、ちょっとしたハンドルミスで死にそうな臨場感だ。

いずれも、トム・クルーズ本人が生身でスタントをこなしているようだ。見上げた役者根性というか、命をかけるにも限度があるというか、とにかく「すごい」を通り越してあきれるほどの迫力だ。

しかし、間違いなくそうするだけの効果が本作にはある。CGを使ってどんなものでも画面の中に作り出すことができる現在では、「実際にやる」というアクションの価値はますます高まっている。そうしなければ生まれない迫力、臨場感、生々しさがスクリーンにははっきりと生まれている。


さまざまなアクションシーンを挟みながらも、ストーリーは非常に明快。

ある情報をめぐって第二幕までのアクションが展開されるわけだが、そこに絡むのがレベッカ・ファーガソン演じる謎の女イルサだ。

先ほどから「謎の女」を連呼しているが、これほど堂々と「謎の女」が登場する映画も珍しい。正体不明、イーサンに協力するかと思えばあっさりと裏切り、しかしヒントは残していく……と、物語を盛り上げるスパイスとしてぞんぶんに働いてくれる。ファーガソンの見事な体術もあり、アクションシーンでの存在感はクルーズに決して引けを取っていない。

そして、最終的には驚くほど深いキャラクターとして観客に多くの感情を与えてくれる。簡単に崩壊してしまいそうなキャラクターを、これほど繊細に描いて見せた脚本、演出、そして演技のすべてに賞賛を送りたい。


また本作はイーサンだけでなく、IMFという組織の再生の物語でもある。特に、イーサンとベンジーの二人の軽妙なやり取りは見ものだ。

脚本家出身のマッカリー監督お得意のオフビートな外しギャグと、非常に高度なスパイ同士の情報戦や騙しあいがシームレスに描かれ、ちょっとした会話の間にもスリリングな展開が織り込まれている。

物語が終盤に向かうにつれ、ハッカーのスティッケル、分析官のブラントの二人が物語にからみ、チームものとしての面白味が増していく。

IMFの陰ともいえるローグ・ネイション=ならずものたちの組織を、彼ら自身が克服し、あるべき姿を取り戻す。ながらくバランスを探ってきた本作だが、ここにきてついに「ミッション:インポッシブル」というシリーズが進むべき方向性を見極めたように思う。次回作はよりチームものとしての側面が強化された展開を期待したい。


最終決戦はこれまでのド派手なシーンとは一転、手に汗握るサスペンス要素が増していく。

冷酷非道な悪党、レーンの罠をかいくぐるイーサンの鮮やかなカウンターは、劇場で声を上げてしまいそうなほど爽快だ。こっちまでガッツポーズをとってしまうこと間違いなしの名シーンである。

そして何よりも最後の最後の決着が素晴らしい。スカッと爽快、思い出すだけで笑みがこぼれるような解決である。もちろん、レーンという悪役が、観客に対して恐怖と憎悪を与えるほどの存在感が発揮しているからこそである。

さまざまな思惑を絡ませ、登場人物の関係の変化を描きながらも、驚くほど明快にストーリーを完成させる。シリーズ最高傑作と呼ぶにふさわしい。


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ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: IRC公開LOG #もの書き 2015年11月4日 | クリエイターズネットワーク

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