ガールズ&パンツァー 劇場版

筆者はかわいい女の子が活躍する話が好きだ。

大きな機械が動いている映像を見るとわくわくする。

そしてもちろん、こんなブログをやっているぐらいだから、映画が大好きだ。

というわけで、かわいい女の子が戦車にのって大活躍する映画が公開されたら、観ないわけにはいかない。

先に結論を言ってしまえば、本作はまさにその「女の子と戦車」のために純化された、見事な世界観の娯楽大作である。

「ガルパンはいいぞ」の合言葉とともに何度も何度も映画館に足を運ぶリピーターを生み出すカルト映画と化している。


「戦車道全国大会で優勝すれば廃校を阻止できる」と信じ、キャプテン・西住みほ(声:渕上舞)を筆頭に、ついに全国優勝を成し遂げた大洗女子学園。

歓声で迎えられた彼女らは優勝記念にエキシビジョンマッチとして知波単学園と組み、聖グロリアーナ女学院、プラウダ高校との対戦に挑んでいた。

故郷に錦を飾った大洗女子学園だが、裏では再び彼女らにとって最大の危機がひそかに進んでいた。

やがてみほたちは、島田愛里寿(声・竹達彩奈)率いる国内最強チーム・大学選抜との試合に臨むことになる……。


本作は12話構成のテレビアニメとして放送された「ガールズ&パンツァー」、略して「ガルパン」の続編にあたる。

あらすじを書き起こしてみても、本作を知らない人には何が何やらさっぱりだと思うが、ここでわざわざ解説していては字数が増えてしまうので、公式サイトなどで確かめてみてほしい。

とにかくひとつ言えるのは、「スポーツとして女の子が戦車に乗る」という思い切った割り切りこそが「ガルパン」の最大の特徴、そして魅力である、ということだ。

本シリーズでは、その世界観を構築するためには労力をまったく惜しんでいない。世界がたどってきた歴史、工学、価値観、物理に至るまで、すべてを「女の子と戦車」のために先鋭化させ、まったく余計なことを考えさせずに観客が集中して楽しめる作りになっている。

映画冒頭には「3分ちょっとでわかるガールズ&パンツァー」というテレビアニメのダイジェストがついている。もし本作が「ガルパン」初体験という人がいたら、その時点で内容の説明だけでなく、「こういうことなんで、よろしく!」という熱量もわかってもらえるはずだ。


本作の見どころと言えば、もう何をおいても大迫力の戦車戦だ。

いかに戦車をかっこよく見せるかにこだわりぬいたアクションシーンが、全体の75%ほどを占めている。上映中の大部分、ずっと戦車を見ていることになるので覚悟してほしい。

3DCGモデルを使ったアクションもすっかり一般化し、以前は浮き上がって見えていたCGも、今や重量感や質感までリアルに表現できるほどの水準に高まってきている。また、本作では手書きの背景の中を3Dの戦車が走り、そのハッチから女の子が顔を出している……というシーンも頻出する。こうした表現ができる技術があるからこそ、この無茶な世界観も説得力をもって提示することができるわけだ。

何十台もの戦車がぐりんぐりんと画面の中を動き回る姿はまさに圧巻。しかも、戦車にカメラを取り付けたような主観ショットではさらに元気よく動き回り、臨場感抜群。腹に響くようなエンジン音、重たげな発砲音まで作りこまれた音響もまた非常に効果的だ。


「ガールズ&パンツァー」であるから、戦車だけが魅力ではない。生き生きと描かれるガールズ、つまりキャラクターたちの表情や会話も大きな見どころだ。

ことあるごとに歴史的事件を引用しようとする歴女チーム、常人には理解不能なバレー用語で作戦を指示するバレー部チームなど、やや極端すぎるものの、それだけに印象を強く残すキャラクターたちがそれぞれの戦車に乗り込んでいる。中でも、試合中の緊張感をいっさい感じさせない一年生チームの「ガールズ」感は特筆もの。「マリア様がみてる」「けいおん!」などで少女性を描き続けてきた脚本家・吉田玲子の面目躍如といったところか。

登場するライバルチームの「濃い」キャラクターも人気の秘訣だ。冒頭でみほたちに包囲されながらも余裕の態度で紅茶を飲み、スコーンだのサンドイッチだの言っている聖グロリアーナ女学院・ダージリン(声:喜多村英梨)、ノリと勢いとパスタに全精力を傾けるアンツィオ高校統帥・アンチョビ(声:吉岡麻耶)など、各国のイメージを極端にデフォルメしたキャラクターたちも、この特殊な世界の上にあっては非常に生き生きと語り、そして戦車に乗る。

初登場にも関わらず彼女らにまったくヒケを取らない濃さと活躍を見せる継続高校・ミカ(声:能登麻美子)は必見。まるでスピンオフ作品の登場人物のような顔で当然のように出てくるので注意が必要だ。

一方で、今回のライバル役となる大学選抜の面々のキャラクターが弱い、というのは本作の数少ない不満点のひとつだ。特にキャプテン・愛里寿は西住流に対する島田流として登場したにも関わらず、みほとの鏡像関係がほとんどない。これではただ廃校がまぬがれたというだけで、みほや大洗女子が何を乗り越えたのか、という印象が弱い。彼女は飛び級によってアニメシリーズで描かれた「高校戦車道」を体験したことがないという、本編に対して批判的な視点を持ちうるキャラクターだったのに、少々肩すかしであることは否めない。とはいえ、メディアミックスによりキャラクターの魅力を深めていくことができるのが、角川のビッグコンテンツへ成長した「ガルパン」の武器でもある。今後のスピンオフに期待したい。


ストーリーの方はといえば、エキシビジョンマッチの後の「タメ」の展開を経て、上映時間の半分を占める長いクライマックスが待ち受けている。

この「タメ」の時間は数多いキャラクターたちが今までで最大の危機に陥り、それぞれ本編では見せなかったさまざまな反応を見せるという一種のサービスになっている。一本の映画としてみればやや退屈なシーンが続くが、本編を見てひとりでも気に入ったキャラクターがいたらきっと満足につながるはずだ。ところで、「ガルパン」の世界では少なくとも高校以上の学校は艦上に建てられているはずだから、カモさんチームがケンカしていた「地元の生徒」というのは、中学生、もしくは小学生なのだろうか……?

クライマックスは本シリーズ最大規模の戦車戦が描かれる。熱血スポーツものの系譜を抑えた、「ちょっと待ったぁ!」からの展開からして、本編視聴者は胸が熱くなること間違いなし。また、各キャラクターの個性をぞんぶんに生かしたアクションの見せ方は多彩かつ多様。観客を一秒たりとも飽きさせない。

特に最後の30分、舞台が高原から狭い場所に移っていくにしたがってアイデアはますます豊富で、観客の想像力のはるか上を行く展開が目白押しだ。

それにあわせて、外連味あふれるフカしも壮大さを増していく。「修理している」ってさらっと言ってたけど、マジかよ!


観客が余計なことに気を取られないように練りこまれた世界観、キャラクター、ストーリー。

ガールズのにぎやかさとパンツァーのかっこよさをひたすらに追及するために、現代日本アニメのすべてがつぎ込まれていながら、それを感じさせずにひたすらエンターテインメントに徹している。

その純度にぶっ飛ばされること間違いなしの、アニメ史に名を残すこと間違いなしの傑作だ。

ガルパンは、いいぞ。


このボタンを押すと、ネタバレ部分が表示されます。