スター・ウォーズ フォースの覚醒

 世界一コアなファンを持つ映画シリーズ、と言ってもこればかりは差し支えないだろう。「スター・ウォーズ」の最新作。
 世界中のファンが待望しながらもこれまで(映画として)描かれなかった、旧三部作のさらに未来のストーリーが、ついに映像化された。
 シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカスの手を離れ、ディズニー配給となった本作。しかし大方の予想を超え、見事な成功をおさめた。その勢いは、つい先日世界記録を更新したばかりの「ジュラシック・ワールド」をやすやすと追い抜いてしまうほど。
 売上だけではない。内容もまた、今までに培われてきた世界をさらに更新し、新たな物語を始めるのにふさわしい完成度だ。

 軍事組織ファーストオーダーに対抗するレジスタンスのパイロット、ポー(オスカー・アイザック)は、ある重要な情報を求めて砂漠の惑星ジャクーを訪れていた。しかし、そのことを察知したファーストオーダーのカイロ・レン(アダム・ドライバー)が急襲。ポーは相棒のドロイド、BB-8に情報を託して捕えられてしまう。
 ファーストオーダーの兵隊であるフィン(ジョン・ボイエガ)は、襲撃の途中、「正しいことをしたい」という思いからファーストオーダーを裏切り、ポーとともに脱出。しかし脱出の途中で撃墜され、ジャクーへひとり不時着する。
 一方、ジャクーに暮らすジャンク拾いで生計を立てていた女・レイは、逃げ延びたBB-8に出会う。翌日、BB-8を追うファーストオーダーが再び襲撃をかけ、レイ、フィン、そしてBB-8の3人は協力して逃げ延びようとするが……。


 「A long time ago,in a galaxyfar,far away(遠い昔、はるか彼方の銀河系で)」からはじまる、恒例のオープニングテロップからして、いきなりの大事件。「エピソードⅣ」から30年が経過したことをぞんぶんに感じさせてくれる。それはもちろん、現実の時間の中だけではなく、「スター・ウォーズ」という壮大な世界でも、それだけの時間が経過したのだ。
 続くのは、巨大なスターデストロイヤーから出発したストームトルーパー部隊。惑星ジャクーを舞台に登場人物が出そろっていく過程は、それぞれのキャラクターの立ち位置を見事に整理して伝えてくれる。ここでのフィンのマスクをかぶったままの演技で、彼の内面の不安が表現され、堂々登場のカイロ・レンは「新たな敵」にふさわしい圧倒的な存在感を見せてくれる。

ここでは圧倒的でしたね。

 「マスクを外す」という行為によってフィンとレイ、ふたりの主人公が観客の前に現れる。こういったちょっとした動作に意味合いが込められているのも、今作が情報をうまく圧縮している印象を強めている。


 全編に様々な工夫を凝らしたアクションシーンがちりばめられているのも、本作の「エンターテイメント大作」にふさわしいゆえん。序盤だけでも、スターデストロイヤー脱出、帝国兵との追いかけっこ、そしてタイ・ファイターとのチェイスと、矢継ぎ早にアクションが連続する。

たまたまおいてあるミレニアム・ファルコンなど、整合性をぶん投げていいところでは思いっきりぶん投げるのも素晴らしいところだ。

 初めはフィンとポー、続いてフィンとレイ(そしてBB-8)がコンビを組む。アクションしつつも、軽妙かつさわやかなやり取りで互いのキャラを引き立てていくのが実に心地よい。イライラしたケンカではなく、互いの腕をたたえながらのドッグファイトは、生身の役者がやっているぶん説得力抜群だ。


 惑星ジャクーを離れた後はスターの中のスター、ハリソン・フォード演じるハン・ソロを迎えての冒険が繰り広げられる。ファンをにやりとさせる細やかな演出やセリフの端々で楽しませる一方、話のスケールが銀河規模に広がっていくわくわく感も「スターウォーズ」らしさをぞんぶんに味わえる。
 銀河の命運を握るある人物(シリーズファンには隠すまでもないか…)をめぐっての冒険は、やがて恐るべき兵器(これもシリーズファンには隠すまでもない)に集約していく。
 非常に「スターウォーズらしい」シーンを今の技術だからできる新しい演出で行っていたり、逆にSW的なビジュアルを新しい展開に乗せて見せるシーンが続く。
 あなた方が知っているあの銀河の、しかしまったく新しい物語ですよ、と高らかに宣言しているわけだ。


 本作で新登場したキャラクターたちの魅力には唸らされる。
 女性主人公レイは強い意志を感じさせる表情が美しい。特に、怒った時の表情がどこかチャーミングで、物語を前に進めていくのにふさわしいキャラクターだ。身軽で、どこかアニメ的なアクションも楽しい。
 フィンはストームトルーパーという悪の手先から、レジスタンスの戦士に転向するという役どころ。神話的なキャラクターが目立つスターウォーズの世界において、地に足の着いた「生身の人間」だ。彼に感情移入してしまう、という観客も多いのでは。
 ポーはとにかくウルトラナイスガイだ。序盤から、彼の雰囲気が映画全体のトーンを決定づけている。


 中でも、悪役でありながら、ある意味で主役の一人として登場するカイロ・レンには何度も驚かされる。
 序盤、強大な悪の戦士として登場した割には、内面には様々な感情が渦巻いていることが描かれる。自分自身の善と悪の折り合いがうまくつけられない。そうしたキャラクターは(たとえばルーク・スカイウォーカーのように)葛藤を持つ主人公として描かれることも多いが、カイロはある意味、そのバランスをどこかで大きく踏み外してしまっている。
 あまりにも有名すぎるダース・ベイダーのあとを継ぐ悪役として、まさかこんなキャラクターを持ってくるとは。大いに驚かされると同時に、筆者はカイロ・レンが大好きになってしまった。

すぐに癇癪を起してモノに当たったり、ハックス将軍に告げ口されて何も言えなくなったり、自分の力を見せつけようとしてレイの才能を目覚めさせてしまったり、非常にケアレスミスが目立つ。が、それらをひっくるめて、カイロ・レンの未熟さ、そして「なぜ彼はこんなに未熟なのだろう?」という観客の興味を引き付けてやまない。

 特に、マスクを外した時の顔が絶妙だ。あんなに複雑な心理を大きな演技なく表現してみせるのは見事の一言である。

ハン・ソロと対面したときのあの顔! まさに今、彼の心の中では光と闇の戦いが繰り広げられ、そして微細なバランスで悪が競り勝ったのだという実感を、言葉もなく与えてくれる。本作を象徴するようなアダム・ドライバーの顔は、誰の記憶にも焼付くだろう。


 過去作から登場するキャラクターたちをはじめ、様々なサービスをしながらも、新しい展開の布石をきっちりと置いて見せる。世界一続編を作るのが大変なシリーズでありながら、見事に必要な仕事をやりきったと言える。
 新キャラクターたちには、まだまだ掘り下げる甲斐がありそうだ。これから始まる三部作を、心から楽しみにしている。

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スター・ウォーズ フォースの覚醒」への2件のフィードバック

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