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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

アラン・チューリングは、現代のコンピュータの基礎を作った人物だ。人工知能を審査する「チューリング・テスト」に名前が残っているが、その功績はあまりに過小評価されてきた。

本編で明かされるとある事情により、彼はその生涯を不名誉な形で閉じている。そのうえ、戦後20年以上もの間、彼が行ってきた活動は国家機密となっていた。しかし2012年、英国貴族院によりチューリングへの恩赦が行われ、彼の名誉と功績がたたえられた。

かくして、悲劇の天才数学者は歴史の脚光を浴び、その活動が広く知られることになる。そして本作において、理想的な形で映像化されたわけだ。

内容はまさに暗号を解くゲームのようだ。さまざまな謎が観客には与えられ、それがひとつひとつ、丁寧に解かれていく。すべてが解き明かされるとき、観客はまさにエニグマを解読したチューリングの喜びに共感し、そして彼が迎えた結末に涙するのだ。

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アメリカン・スナイパー

巨匠クリント・イーストウッドにとって、暴力、そしてその最大の発露である戦争は、重大かつ重要なテーマであるようだ。

「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」で太平洋戦争を描き、「グラン・トリノ」では朝鮮戦争の記憶に苦しむ元兵士を演じて見せた。彼が興味を向けているのは、戦場で暴力を振るったものもまた、自分自身の暴力に苦しめられるという、いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)である。

イーストウッド最大のヒット作となった本作では、イラク戦争がいかなるものであったかという大きなテーマではなく、そこにいたひとりの兵士がたどった人生に焦点を当てている。

日本人である我々からすれば、現代のアメリカの現実を知る一端にもなるだろう。

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フォックスキャッチャー

他人が罪を犯した時、その理由の全てを理解することは、決してできない。

どんなに綿密に調査をしても、それは同じだ。本作は実際に起きた事件を下敷きにしているが、なぜその行動をしたのかを、完全に解明しようとはしていない。

その代わり、シーンの全てからにじむ不穏さや、役者の所作のひとつひとつが、その結末に向けて時に加速し,時に停滞しながら進んでいく。

あなたがまだこの映画をまだ観ていないなら、事件のことを調べる前に本作をみて欲しい。史実者としては異端だが、ネタバレ厳禁だ。

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